自動車史の様々な断片が集うレトロモビル【GALLERIA AUTO MOBILIA】#027

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小さな断片から自動車史の広大な世界を管見するのがこのコーナーである。レトロモビルは一望のもとに自動車史を俯瞰できるほどの規模だが、そこで選んできたものは、やはり自動車史の様々な断片ばかりであった。

レトロのお土産

20年以上通ってるので、レトロモビルについての取材記事を書いたのは私が日本人では一番多いかもしれない。今回の会場では私の生年である’57年当時のミッレミリアのメディア・パスを入手した。

2月のパリには、これまで20年以上にわたって何度も訪れたが、幸い寒波に襲われることもなく、寒さを感じたことがない。雪に降られたのは今回で2回目だが、そんな時でもマイナス1、2℃程度なので、今年の東京とさほど変わらない。土、日には、アンティックのマーケットが立ち、朝からみんな散策している。

メップは憧れのモノポストだから、この新刊は買わずにはいられなかった。登竜門のワンメイク・レース用マシーンで、後期のシトロエンの空冷4気筒を搭載したX27が私のフェイバリット。

日本では’70年前後に軽のエンジンを搭載したFJ360/FL500が盛況だったが、フランスでは’50年代に500ccのレーサー500というフォーミュラレースが盛んだった。各国のレース史における青春時代だ。

だいたいがレトロモビルの広大な会場は建物の中なので温かい。私にとって2月のパリは寒い思い出がまったくない。それどころか、いつも何かしら熱気を感じてきたものだ。

ヒストリックカー専門誌でも愛好家によるマニアックなものが刊行されている。この『AUTODIVA』では、当時の関係者に取材して得たエピソードや写真をもとに新たな角度から自動車史が紹介されていた。

表紙の可愛いイラストに注目して手に取ると、このバイク用エンジン・メーカーのお孫さんという夫人が、ページをめくりながら、いろいろ解説してくれて、思いがけなくも新しい知識を得た。

レトロモビルでは、パナールやサルムソンなどのクラブのブースでは熱心な愛好家たちが気焔をあげているし、個人で製作しているモデラーも白い頬を紅潮させながら自らの作品について情熱的に説明してくれる。オークションでは密かに狙っているクルマをライバルに負けじと競り落とすためにカッカと燃える人たちがいる。このヒストリックカーの世界の冬の社交場は実はとても熱い空間なのだ。

こちらはトリノのオートモト・レトロで購入した『カルロ離脱後のアバルト車』。書籍またはUSBメモリーに、ミニカーのおまけがついた2種類が同時に刊行されていた。わたしは軽量ゆえにUSBを選んだ。

モリーノは建築家・写真家として近年世界的に再評価されたが、我々にとっては’55年ル・マンに出場した、双胴のナルディの発案者兼ドライバーとしてなじみ深い存在だ。

自動車史のすべてが俯瞰できるほどの多種多様なクルマたち。そして、旧いパーツや、おもちゃ、専門書籍についてはまるで宝探しの趣だ。このページで紹介しているが、幾度レトロモービルを訪れても、つい興味を惹かれ購入してしまう。

蚤の市を歩くのは好きだけれど、クリニャンクールには行かず、もっぱらヴァンヴばかり。そこで見つけたティーカップ。クルマの絵柄の陶磁器も、可愛いものが揃う。

ドラージュ愛好家倶楽部謹製の西洋加留多と、日本なら駄菓子屋さんで売っていそうな子供向けバッチ、あるいはお菓子のおまけだろうか。’60年前後のもので、チープさが愛おしい。

半世紀以上も昔のバックナンバーだって探すことができ、かつて買い逃した本も見つけることができるのだ。日本では洋書の名著のマーケットはなく値段がつかないが、こちらでは正当なプレミアム価格となっており、絶版古書の高額なことに感心することもままある。

ステアリングとスピナーを組み合わせたようなデザインのTシャツは、南仏の英国車コレクターの子息が友達のために作成したところ、好評だったので製品化して売り出したとのこと。

フランスのブガッティ・クラブもいろんなグッズを作っている。主に会員向けだが、レトロモビルのブースなどでは誰にでも販売してくれる。しっかりショッピングバッグまで用意して。

ミニカーについても、日本のマーケットはドメスティックだとつくづく思う。その辺りからも100年以上の自動車文化を持つフランスと、モータリゼーション50年ほどの歴史しかない日本との、大きな隔たりを感じてしまう。

ファセル・ヴェガの会員向けグッズもレトロモビルならではのアイテム。なんといってもこのロゴ・デザインがカッコイイため、これまでもネクタイなどを買って、日本のオーナーへプレゼントしたものだ。

フランスのサイクルカーの中では、とくに飛行機のエンジン製造やGNのライセンス生産から始まったサルムソンを好ましく思っている。今回、キャップとマフラーが手に入ったのは嬉しい。

それにしても、ここで実に多くのことを学んできたことを感慨する。通うようになった当初は吉田秀樹画伯にお世話になり、いろんな人を紹介されたものだ。そう、ここにはモノがあるばかりか、人がいる。自動車は単に輸送手段であるばかりか、人が生み出した工芸品であり、時には芸術品である。

チューブラーシャシーで名高いジルコの新刊は、増補され内容も詳しくなった。フェラーリやマセラティだけでなく、エルミーニのどのモデルにどのタイプのシャーシーを供給したのかまで明記されている。

20世紀初頭に画家になろうとしてパリにでてきたマルセル・デュシャンは、自動車よりも美しいモノは作れないと悟って、絵筆を捨てて、概念的芸術の創造に向かった例もある。レトロモビルを訪れると、ともすれば忘れがちな自動車の素晴らしさを再認識して、自動車への熱い思いが蘇るのだ。

ピーターオートのような大手イベント会社が派手に飾り付けたブースもあるが、フランスのあちこちで開催されているヒストリックカー・イベントの情報が得られるブースがあるのもレトロモビルの魅力だ。

Text:岡田邦雄/Photo:横澤靖宏/カーマガジン479号(2018年5月号)より転載

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2019/10/26 18:00

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