人間と融けあうための究極メカニズムを持つ「日産・GT-R」【世界の傑作車スケルトン図解】#29-2

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理想の接地荷重を求めた重量級ボディ

日産自動車のカルロス・ゴーン社長から全権を委ねられて開発の陣頭指揮に当たった水野和敏は、ただただ「最高の自動車」を作ることしか考えていなかった。だから好評のスカイラインを支えたFMプラットフォームなどに見向きもせず、すべて白紙から発想を進めた。そして、何でもかんでも軽量化という世の流れにも、真っ向から疑いの酸を浴びせた。開発テストはベテランのレーシングドライバー鈴木利男を中心として、高性能車の虎の穴ニュルブルクリンクで行ない、国内ではハイランドレースウェイを攻めまくった。求めたのは理想の接地状態だった。

GT-Rの主なメカニズムを俯瞰で眺めたところ。

孔開きローターを締めつけるキャリパーはブレンボ製のフローティングマウントで、フロントが6ポッド、リアが4ポッド。

無用に多気筒にせずV6を奥深く押し込んでフロントミッドシップ配置とし、デュアルクラッチの6速トランスミッションをデフと一体化してリアにおくトランスアクスル方式としたのは、そのためだった(そこから前方にプロペラシャフトを伸ばして4WDとした)。フラットライドへのこだわりも半端ではなかった。どんな瞬間もサスペンションが正しく伸縮し、タイヤを正しく接地させなければ、安心して高速で走れない。しかし、言うは易く行なうは難し。たとえばニュルブルクリンクの高速区間で突起を通過すると、タイヤ一本にかかる荷重は瞬間5トンにも6トンにも達する。それに耐えるようにサスペンションアームはもとより、スプリングもダンパーも、それを取り付ける車体も徹底的に鍛え抜いた。その結果1.7トンを超える重量になってしまったが、どんな外乱でもびくともしない絶対的な安定性を手に入れることができた。

ボディ後部の中央はディフューザー状に成形され、大きなダウンフォースを生む。

車内はけっこう広々。

栃木工場では、パネルの合わせ目を厳密に詰めるなど、呆れるほどのこだわり作業が続く。

そのうえでコクピットのスイッチにより、ダンパーの減衰特性も変速機のモードも、マイルドからレース的な走行までカバーできるように切り換えられるが、そんな変化を味わえるのも、この強固なボディとシャシーがあればこそ。3.8LツインターボのV6は初期型でも480ps、最新モデルでは550ps、さらに特別なNISMO仕様では600psを叩き出し、武骨な外観そのままの暴虐的な高速走行を演ずるが、実はドライバーは緊張することなく、鼻唄まじりで性能を満喫できる。

最新のNISMO仕様は、ターボを大型化するなどで600ps。

専用のカーボン製エアロパーツにより、高速走行でのダウンフォースも大幅に増した。

性能といえば、日本国内の特定のサーキットに行った時だけカーナビがそれを感知し、180km/hのリミッターを解除するモードもあって、ストレートさえ長ければ300km/h以上まで伸びるとも言われている。この動力性能と操縦性は、ニュルブルクリンクで記録した最速タイムに対してポルシェが真剣にクレームを付け、日産との間で論争が起きたことでも実証された。人間が必死にクルマに従うのではなく、クルマが優しく人間の可能性を見守り引き出してくれるのがGT-R。いろいろな意味で究極のスーパーカーと言えるのではないだろうか。

 

2014年のマイナーチェンジを受け、2015年モデルのGT-Rも細部を改良。ダンパーを微細に煮詰め、路面の不整などでも意図しない動きが出ないようにした。乗り心地や静粛性も一段と向上。

解説:熊倉重春

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