「三菱・ランサーエボリューション10」はドライバーを読んで自らを律し、驚くほど簡単に走れてしまう“ロボ・カー”【世界の傑作車スケルトン図解】#27-2

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ACD+AYC=S-AWC、深い4輪コントロール

初代ランエボ(1992年)は衝撃的だった。ギャランVR4で評判だったターボエンジンとフルタイム4WD機構を全長4.3m、重量1.2トンの小型車ランサーに詰め込んだのだから、走りも凄かった。コーナリング中にアクセルを放すとダダ〜ッと横を向き、踏んだら踏んだで強度のアンダーステアのままぐいぐい力強く加速するというジャジャ馬ぶりも楽しかった。

一貫して逆スランドノーズを採ってきた三菱。ギャランフォルティスから派生のランエボXも、三菱重工が手掛けた戦闘機F86のノーズ形状を受け継いで「ジェットファイターグリル」と名乗る。

しかし三菱は、スリリングなオモチャなど作るつもりではなく、どこまでも理論的に正しく破れ目のない高速走行物体をめざしていた。その象徴がアクティブ・ヨー・コントロール(AYC=通称エボIVから)とアクティブ・センターデフ(ACD=エボVIIから)。リアデフと一体化され左右へのトルクベクタリング機能を発揮するAYCは、量産車に採用された例としては、世界で最も早い部類に属する。

栄光への道を拓いた初代ランエボ。4WDは生煮えだったが速さはピカイチ。限定2500台が3日で売り切れてしまったため、もう2500台が急遽追加生産された。

これに加え、前後への配分を無段階かつ瞬時に調整するACDやスポーツABSまで駆使したS-AWC(総輪総合制御)の効果で、ランエボは常に4輪それぞれ理想の駆動状態を保つことができた。極端に言えば、ドライバーが受け持つ範囲がどんどん減ってしまった感さえある。今どんな状態かを知るには、計器盤の現況表示映像を注視するしかない。そんなロボットカー的な特性は最終仕様で完成の域に達したから、ここでは末尾を飾るランエボXの透視モデルを紹介しておこう。

大きなスポイラーを装着したランエボⅩのリアビュー。倒立ビルシュタインを備えるサスペンション、ターボ300㎰の4B11エンジン、深いレカロ製スポーツシート、真紅のブレンボキャリパーなどユーザーが喜ぶ装備。

こんなランエボを猛然と突進させたエンジンは、初代(250ps)からIX(280ps)まで名機4G63型のまま。ターボの細部に至るまで数知れない改良を施され、その経験を生かしたXでは軽量な4B11型(300ps)に換装された。改良や変更といえばAYCやACDも不変ではなく、日常のスポーツドライビングからレースやラリーでの競技走行など用途ごとに、わざわざ1.5ウェイの機械式LSDを搭載するなど、気の遠くなるほど目配りが行き届いている。

ボンネットやフェンダーからルーフまでアルミ化したほか、重量配分にも配慮した高剛性ボディと、鮮やかなトルクベクタリング機能が光るAYC。

だからこそ、ヨーロッパの名門が繰り出す本格WRカーにグループA仕様で対抗しつつ、インプレッサともども、1983年から破竹の連勝街道を突っ走ることもできたのだ。ただし経歴の後半にはベース車がランサーからランサーセディアに変更されたり、WRC撤退後のXではギャランフォルティスが土台になったり、数奇な運命を辿ら されたりもしたあげく第11世代目の声を聞かないまま、2014年限りでランエボとしての生産を終えることが発表されてしまった。それを惜しむファンの声に応え、2015年には本当のファイナルエディションが1000台だけ販売されたがアッという間に完売。そういえば初代のランエボも、3日間で限定2500台が売り切れてしまうほどの反響だった。

 

解説:熊倉重春

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