魂を激しく掴む野生の吼え声「ランチア・デルタHFインテグラーレ」【世界の傑作車スケルトン図解】#13-2

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攻めれば攻めるほど締まるイタリア職人ならでの味付け

1980年代のWRCに猛威をふるったランチア・デルタ・インテグラーレの武勇伝は、まだまだ鮮やかな思い出として脳裡を彩っている。しかし、それを詳しく振り返ると、膨大な書物になってしまう。強力なライバルを片っ端から叩きのめし、結果としてランエボやインプレッサを強く育てる親となった道のりで、車体、サスペンション、エンジンなどすべてにわたり、考えられる限りの改善を詰め込み続けたからだ。しかも、1992年限りでワークスとしての参戦から撤退した後も、華やかすぎる戦績を慕うファンの声に応えて進化を続け、究極の完成形にまで登り詰めている。そこでここでは、その大トリを受け持った仕様の透視イラストを紹介する。

グループAでは、エンジンルームの換気と冷却が大問題。インテグラーレの前面も、開けられる部分すべてエアインテークが切り抜かれている。ヘッドライト部は上の写真が正解。

フルネームは「ランチア・デルタHF・4WDインテグラーレ・エヴォルツィオーネ・ドゥエ・コレツィオーネ・エディツィオーネ・フィナーレ」と非常に長い。中でもこのモデルは、日本のファンのためにだけ特に仕立てられたもの。ファイナルエディションとして手掛けられたロットから日本に送られた400台の内、特別な装いを凝らした250台の超限定仕様だ。

インテグラーレの名が付く前のデルタHF 4WD。まだ4フェンダーが張り出していない。トルセン式のフルタイム4WDで、4気筒ターボは167㎰を発生。

濃い赤の地に黄色と青のストライプを走らせたのは、マルティニやトティップなどスポンサーの企業色で塗られるようになる前の本家ワークスカラー。つまりインテグラーレは、最後の最後で本当の姿を取り戻したと言えるかもしれない。

最終期インテグラーレのコクピット。ステアリングホイールをスエード巻きにし、押しボタン式スタータースイッチを付けるとコレツィオーネ仕様になる。

もともとデルタは、VWゴルフの対抗馬として1979年に発売されたコンパクトハッチバック。それをベースにありとあらゆる武装を盛り込んだのがインテグラーレだ。いや、ベース車の外観を寸分も変えられず、メカニズムの改造も最小限に抑えられた車両規定を逆手に取り、グループAラリーカーをそのまま量産化してしまったようなものだ。

猛々しい外観になる以前、ラリーデルタの外観は基本のまま。清潔感あふれる2ボックスボディは、初代ゴルフと同じくジウジアーロのデザイン。

だからここには、イタリアの御馳走がめいっぱい盛り付けられている。たとえば211psのターボ4気筒エンジンも、源流を辿ると名設計者アウレリオ・ランプレディの名まで浮かび上がってくる。7.5J×16のホイールはOZ製、タイヤはピレリP7000、そしてもちろんブレーキキャリパーはブレンボ。そのうえで、クルマ全体から立ちのぼるイタリアーノならでの熱気が嬉しい。普通に流すとガタピシ華奢なボディなのに、いざ攻めるとピシ〜ッと緊張感を湛えて締まる。その瞬間はクルマという機械ではなく、まるで駿馬のようだ。だからインテグラーレに「乗る」のではなく「着る」感覚になるし、ドライビングというよりスパーリングの気分に浸れてしまう。

 

ブリスターフェンダーを大型化した1989年のエヴォルツィオーネ。デビュー戦で優勝するなど、ビアシオンの連続ドライバータイトル制覇に貢献した。

解説:熊倉重春

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