モンレリーを舞台にスピードと耐久力を見せつけた「シトロエン・ロザリー」【GALLERIA AUTO MOBILIA】#019

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様々な断片から自動車史の広大な世界を菅見するこのコーナー、今回はパリの南に1920年代にできたオートドローム・ド・モンレリーを舞台にスピードと耐久力を見せつけたシトロエン・ロザリーを紹介したい。

ロザリーの孤独で優雅なワルツ

モンレリーが完成すると、そこを舞台にACFグランプリが開催された。1970年代でもフェラーリ512Sやポルシェ917やマトラMS660が戦うパリ1000kmレースが開催されていたし、映画『男と女』や『冒険者たち』の舞台でもあったから日本でも知られているサーキットである。一番の特徴はすり鉢型のバンクだが、フルコースでは12kmを超える。

第1次世界大戦終結後の1924年にパリの中心部から1時間ほどの所にフランス最初のサーキット、オートドローム・ド・モンレリーが完成した。すり鉢状のバンクがある高速コースで、たちまちスピードのメッカとなり、レースだけでなく速度記録の舞台ともなったのである。

たとえば、黎明期の自動車レースで活躍したルノーは、その後は絶えてレーシングカーを作らなかったが、モンレリーができるとそこでスピード記録に挑戦した。戦後に航空機メーカーから自動車製造に転身したヴォアザンも、レースの主催者と衝突してからはモンレリーでのスピード記録で、性能をアピールすることを選んだ。

ロザリーIIは、1933年に15レジェールのエンジンを搭載したロザリーIIIに発展し、さらに改良されてロザリーVとなり、28の世界記録と50の国際記録を樹立した。上のモンレリーについての本にも実車の写真が掲載されている。ゼンマイ巻きにもダブル・シェブロンのマークが刻印されているのが嬉しい。ちなみにタイヤはミシュランだ。

シトロエンの場合はいささか事情が違った。戦争中に砲弾の大量生産で財産を築いたアンドレ・シトロエンは、戦後に自動車の大量生産に乗り出した。ヘンリー・フォードを信奉するアンドレはアメリカ流の派手な広告を好み、1924年からはエッフェル搭をシトロエンの広告塔に仕立て直してしまった。しかし、アンドレはレース活動については無駄な費用と考えていた。だからある時、シトロエンのディーラーがオイルメーカーのヤッコと組んで、C6をベースにスピード記録に挑戦したのには無関心で否定的だった。しかし、ロザリーと名付けられたレコードブレーカーが世間の注目を集め、シトロエンの広告にもなることを理解すると、自らが陣頭指揮に乗り出した。

シトロエンのすべてのモデルカーを網羅した大著にはこのシトロエン自社製のロザリーⅤのモデルが1934年に生産され、青と黄と赤の3色があったことが記述されていた。スケールは約1/11だそうだ。1995年の刊行で、ソリドやノレブ、マジョレッティやモンブランなどのXMやBXあたりまでの各モデルまでが一覧できる。

最初のロザリーはC6Fの6気筒2442ccのエンジンを搭載し14の国際記録を樹立した。アンドレは、それをベースにエンジンをC6Gの2650ccのエンジンに載せ換えてロザリーIIと名付け、1932年の春に再びモンレリーを訪れた。アンドレは単なる速度記録を目指すだけでなく、その耐久力をアピールするために、トラブルが発生してエンジンが止まるまで走り続けることを命じた。3月5日にスタートし、5名のドライバーが交代で運転したこの挑戦は4月28日まで続き、ディストリビューターを支える小さな部品が壊れて遂にエンジンが止まった。それまでの走行距離は13万4866kmとなり、平均速度は104km/hであった。その間にロザリーIIは50の世界記録と81の国際記録を樹立した。

かつてのシトロエンは、宣伝のために自社製のおもちゃも生産していた。子供達の心もシトロエン贔屓に染めていこうという遠大な広告戦略だ。こちらはそれらを紹介した本で、ロザリーⅤも紹介されている。しかし、私がもっとも気になるのはパリジェンヌの人形が付属した5CVのモデルだ。完品はかなりレアなようで、実車より高いこともあるだろう。

アンドレの野心は膨らみ、次に連続30万kmの走行記録を命じロザリーIVが開発された。4気筒1452ccエンジンの8Aをベースにして小さくなったため、プチ・ロザリーと呼ばれた。ロザリーIVは1933年3月15日にスタートすると、134日目で30万kmを走破。平均速度は93,47km/hに達し、目論見は見事に成功したのだった。

Photo:横澤靖宏/カーマガジン471号(2017年9月号)より転載
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2019/08/30 10:00

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