ジムニー乗りなら十分理解できる進化
7月5日に正式発表・発売されてから、1カ月も経たないうちに年間の国内販売目標台数以上を受注した新型ジムニーとジムニーシエラ。まずはオンロードでの少し攻めた走りについて紹介しよう。
「JB64(軽規格ジムニー)」の試乗車は最高級グレードXCの5速MT車だ。クラッチを踏み込みながらプッシュスタートボタンを押すと、瞬時に「R06A」が目覚めた。アクセルを煽ると小気味よく吹け上がる。そして、1速にシフトすべくレバーを左前方へ動かすと「おっ!」と軽い衝撃。グニャグニャしたシフト感は歴代ジムニーに通じる不満点だったが、JB64はカチッとしているのだ。普通車しか知らない人だと何も感じないだろう。しかしジムニーを乗り継ぐ人にとって、これはスズキに拍手を送りたいほどの改良である。
前後3リンク式コイルリジット・サスペンションはJB23から踏襲されたシステムだが、車両重量や軸重量の変更によりセッティングは変えられている。また、フロントラテラルロッドのマウント位置と長さが変更され、ステアリングタイロッドとの位置関係が平行に近づいた。
これらの複合的な組み合わせが従来よりもスムーズなストロークを実現している。特に、フロントサスペンションは初期入力からスピーディーに働き、非常に快適な乗り心地を実現。路面追従性が良く、補修跡などのちょっとした段差を乗り越える際もリアの不快な突き上げは感じさせない。
エンジンが軽くなり、また中心部分に寄せられたため、クルマとしての一体感が強まっている。捻れ剛性が高められたフレームの恩恵で、ハイスピード&ワインディング走行での安定感は大きく向上。ステアリングダンパーの効きも良好で、軽自動車とは感じさせない落ち着いた走りを見せるのだ。
トランスミッションのギア比は先代モデル(JB23)よりもハイギアード化され、最大トルクも103Nmから96Nmへとダウン。車両重量は40kgも増加している。それを聞くと加速性能の悪化が懸念されるが、トルク曲線は低中速域が高められている。それによりストレスを感じさせるどころかJB23よりも扱いやすさが向上。ブレーキ性能も高められているから、カチッとキマるシフトなどと合わせてスポーツ走行が楽しめるのだ。
気になったのはアクセル。コンピューターが制御するバイワイヤー式のため、どうしても「ここぞ!」という時の瞬発力に物足りなさを感じてしまうのだ。まぁ、街乗りメインの人ならば、さほど気にならないことだと思う。また、アフターパーツメーカーが対策品をリリースするだろうから、大した問題ではない。
良いこと尽くめだがあくまでジムニーのハナシ
一方、ジムニーシエラはAT車のみ、それもわずかな時間しか試乗できなかった。そこで感じたのは「4速でも十分じゃないか!」ということ。初めて搭載されるK15B型1,460ccエンジンはATとの相性が良く、停止状態からの加速は良好で、中間加速も不満を感じさせない。先代のJB43に搭載されていたM13A型(1,328cc)よりも格段にトルクフル&パワフルな走りを実現している。
前後トレッドともにJB64よりも130mm拡大された恩恵は大きく、直線、コーナリング問わずに安定感が高い。高速道路を延々と走ったり、ロングドライブしたり、長時間ドライブ時の疲労は大きく低減されるだろう。
オンロードでは良いこと尽くめの新型ジムニー&ジムニーシエラだが、もちろんそれは法定速度内でのことであり、ジムニーとしての話。クローズドコースでハイスピード走行を楽しむとなると物足りなさは否めない。特に、フロントのコイルが柔らか過ぎて心許なさを感じるのだ。ダンパーも容量不足で、ハードな走りを続けると簡単に熱ダレしてしまう……。これはあくまで競技レベルを前提とした評価なので悪しからず。
また乗り心地が良い! というのもあくまでジムニーとしての評価。乗用車しか乗ったことのない人だと「ロールが大きい」「遅い」「フワフワする」と感じるに違いない。車高の高い本格的オフロード4駆とはどのようなクルマであるか? それを理解している人であれば、納得してその走りを楽しめることだろう。(オフロード試乗編はコチラ)
マニア必見! ジムニーマイスターが教える「新型ジムニー」のツボ!
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