軍用車のメカを転用してリフトアップ

 

　いや、もう笑うしかないのである。見て、乗って、改めてスペック表を確認して、そのあまりのブッ飛びように開いた口がふさがらないのだ。しかも口角がひっきりなしに上がったり下がったり……まったく、セワシナイにもほどがある！

 

　さて、今回試乗したのはメルセデス・ベンツのG550 4×4² （フォー・バイ・フォー スクエアード）。カタチはもう37年間も生産されているＧクラスそのものなのだが、サイズ感が普通のモデルより格段にデカくて面食らってしまう。それもそのはず、リフトアップされた全高はノーマルG550より27cmも高く、また325/55R22という巨大なタイヤを収めるため、オーバーフェンダーが拡大されて全幅は24cm広がっている。それでいてリアにスペアタイヤを背負わないから全長はマイナス5.5cmに。とにかくワイドで、見上げてしまうほど高いのだ。試乗車が向こうからやってくる様子はどこか小山がズルズルこちらに平行移動してくるようで、思わず後ずさりしたくなってしまったほどだ。

 

 

　エンジンは4.0リッターV8ツインターボで421ps／610Nm。これはノーマルG550と同じスペックであり、4WDシステムも同様にフロント、センター、リアの３カ所にデフロック機構を備えるフルタイム式となる。ならばどこが違うのか……といえば、足回りが全然違う。オフロード性能を極限まで引き上げるため、軍用軽装甲車LMPV（Light Armoured Patrol Vehicle）に使われるポータルアクスルを流用、G550が最低地上高 235mm、渡河深度600mmであるのに対し、４×４²はそれぞれ460mm、1000mmに向上。つまり深さ１ｍの川も渡れるということ。またポータルアクスルとはなにかを簡単に説明しておくと、左右輪のドライブシャフト先端にギアを装着、その下にもうひとつギアをかませてそこにタイヤ＆ホイールを組みつけることで、タイヤの取り付け位置を下方向にずらす装置のこと。これでサスペンションを大幅にリファインすることなく最低地上高のアップを実現している。

 

　だが最大の疑問は「そもそも大メーカーがなぜこんなクルマを？」ということだろう。通常のＧクラスだってオフロード性能は市販車最強レベルだし、そもそもＧクラスのような1000万円オーバーの高級車で泥遊びをする好事家が多いとも思えない。となるとやはり実需としては砂漠の国のお金持ち向け、せっかく作ったので世界のみなさんもよろしければ……ということだろう。ちなみに２年ほど前に発表された６輪駆動のG63 AMG ６×６をご記憶の方もいると思うが、この４×４²は、その６×６発売時の「これはこれでサイコーだけど、もう少し普通に使えるモデルがあってもいいよね」という声に応えたものだそうだ。

 

→後編に続く

 

 

■関連記事

• 正確､確実､多用途！ ダイナミックな走行テストを受ける新型｢BMW X3｣
• ホンダ､｢N-VAN｣を一部改良して発売､特別仕様車｢STYLE＋ NATURE｣を同時発売